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診療報酬不正 生活保護を食いものに
生活保護を受けている人に手術をしたように装い、診療報酬を不正に受給した疑いで、奈良県内の病院の理事長と事務長が逮捕された。不正に受け取った額は1千万円以上に上る。
生活保護を受けている人の医療費は全額が公費で賄われ、取りはぐれがない。患者の費用負担がないため、診療報酬の中身にチェックの目は届きにくい。
そこにつけ込んだのが、今回の不正である。奈良県警は、まずは事件の全容をきっちりと解明してもらいたい。
手口は組織的で悪質だ。病院のカルテは、実際に手術や検査をした場合と、架空請求のものが見分けられるよう、赤や黒の印で色分けされていた。
必要のない検査や手術が繰り返されていた疑いもある。整形外科の手術で入院した患者に心臓カテーテル検査が行われていた。手術を拒んだ生活保護の患者は、駅のベンチに放置されたという。
病院の不正を指摘する投書が、2年前に奈良県に寄せられていた。県はこれまで2度、病院に調査に入ったものの、不正請求を見抜けなかった。
医療機関からの請求は、治療内容を記した診療報酬明細書(レセプト)で行われる。審査機関がチェックするものの、書面審査には限界がある。
不正請求が発覚するきっかけは、告発や情報提供に負う面が大きい。それを生かせなかった奈良県の対応が悔やまれる。
県が立ち入り調査した際、カルテとレセプトの照合は数件だったという。調査になおざりな面があったのではないか。県は調査態勢を見直し、強化すべきだ。
生活保護がからんだ不正請求は各地で後を絶たない。同じような事例が埋もれていないか、他の自治体も徹底して調べてほしい。
不正の遠因に、公的福祉の貧しさがあることにも、目を向ける必要がある。
この病院では、80床ある入院ベッドの半数以上を生活保護の受給者が占めていた。他府県での受給者も多数受け入れ、ホームレスの人もいた可能性がある。
景気の低迷で受給者が右肩上がりで増えるなか、生活に困っている人の行き場の確保に、どの自治体も頭を痛めている。この病院が「受け皿」として重宝がられていた面が否定しきれない。
地域のなかで受給者が生活していけるよう支える仕組みと、福祉制度全体の底上げが、不正の防波堤になるはずだ。
著者名/信濃毎日新聞 診療報酬不正 生活保護を食いものに
http://www.shinmai.co.jp/news/20090702/KT090701ETI090014000022.htm
最終アクセス2009年7月4日
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