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受けた処置 ケア 一目で分かる 在宅療養手帳が成果
09/04/30 【最新情報
いくつかの病気をかかえ、医療や介護のサービスを利用する高齢者は多い。京都府南西部の乙訓(おとくに)地域では、一冊の手帳が情報連携に成果を挙げている。病院や診療所での治療経過、介護サービスの内容などを書き込んでいく"手書きデータベース"だ。 

 京都府大山崎町のグループホーム。糖尿病で認知症の八十代の女性を往診に来た馬本郁男医師(馬本医院院長)は「変わったことはありませんか?」と声を掛けながら水色のファイルの「在宅療養手帳」を受け取り、じっくりと目を通した。いつもの診療手順だ。

 A5判の手帳は、本人の氏名、住所、介護者の連絡先などのページに始まり、福祉関係では、介護保険の要介護認定の推移、介護サービスを受けている事業所や担当者の連絡先、サービス利用状況などを記載。医療関係は、主治医、主な病名、入院歴、薬歴、歯の状態、訪問口腔(こうくう)ケアの情報などのページが続く。

 その後の月間予定表、生活経過表は受診の日程や血圧、便、体温、本人の訴えなどを、日記形式で記入する。ホームの職員が気付いたことも、医師や看護師らに伝わる。

 馬本医師は「食事が食べられないと水分が心配だから、血糖値を見ながらスポーツドリンクで補いましょうか」と話し、経過表に書き入れた。カルテとは違い、普通の言葉で書く。「最初は面倒とも思ったけど、分かりやすく書く力がついたよ」と馬本医師は笑う。

 馬本医師は、車で隣の長岡京市へ。在宅療養を始めた末期がんの男性を往診し、妻(81)から状態を聞いた。ここでも手帳の情報を参考にしながら「脱水症状が出てるね。点滴を少し増やそう」。男性の手帳には、中心静脈栄養や点滴の写真も張られ、看護スタッフらが同じ処置ができるように工夫されていた。

 長岡京市、向日(むこう)市、大山崎町の二市一町からなる乙訓地域で、この在宅療養手帳が生まれたのは一九九六年。在宅医療に熱心な野々下靖子医師、社会福祉協議会職員だった山地岑代さん(現・デイサービスセンター施設長)らが中心となり、情報の連携を図った。

 六百七十三冊からスタートし、今年一月現在の累計で六千七百七十七冊に。歯科医師会や薬剤師会なども参加し、組織や利用地域が広がった。在宅ケアを受ける高齢者の74%が利用している。

 手帳を配布する医療機関、福祉施設など(現八十九団体)の現場担当者で作る在宅療養手帳委員会では定期的に勉強会を開き、より役に立つ手帳のあり方を検討してきた。

 その中で二〇〇一年には「介護サービス共通健康診断書」も生まれた。手帳にはさみ込む書式の診断書(有効期間一年)で、これがあれば介護サービスの利用時などに患者が新たに診断書を取り直す手間や費用が省ける。〇五年からは京都府全体に広がっている。

 連携が進む中、寝たきりで話せないお年寄りの背中の変化を入浴サービスの担当者が気付いて手帳に書き込み、読んだ医師がすぐに治療を始めて、褥瘡(じょくそう)を防いだこともあった。ある施設で疥癬(かいせん)やノロウイルスなどの集団感染が起きた際も、緊急招集で診断、治療、予防法を全施設に周知し、感染拡大や風評被害を未然に防いだ。山地さんは「医師が協力的になって、患者さんの生活そのものを診てくれるようになった。手帳によって医療、介護全体の質の底上げにつながったのが一番の成果」と話す。

 介護家族も手帳を通じて、多くの専門職に支えられている安心感を持てる。「私の人生が書かれている」とじっくり読むのを楽しみにしている高齢者もいるという。

 馬本医師は「手書きは大変で煩わしがる人もいますが、一覧性があるし、情報すべてがオープンにされることに意味がある。それを本人や家族と共有することも、とても大切」と話す。より効果を検証するための調査を今年始めている。

 

著者名/CHUNICHI Web  中日新聞   受けた処置 ケア 一目で分かる 在宅療養手帳が成果

http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2009043002000069.html

最終アクセス2009年4月30日 

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