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長い坂を登って /高知
■前職・事務系の派遣。「仕事を転々とするのに疲れた。手に技術を持ったら強みかなあって。2月末、ハローワークで掲示を見て渡りに船と志願しました」=中山志保さん(40)、家族と同居。
■前職・病院事務長。「自分は雇われるのに向いていない。できたら独立したい。病院で患者さんと接するうちに、事務部門でなく直接サービスしたくなりました」=木村徹(とおる)さん(40)、妻と2子。
■前職・携帯電話販売の契約社員。「時給700円。とにかくひどかった。家族ができたら養えません。地元の宿毛では働く先が限られていて資格が必要だったんです」=横山亮さん(25)、独身。
3人は今、10代の生徒に交じって、平成福祉専門学校(高知市針木北1)で学んでいます。仕事の厳しさの割に報酬が低い介護職場をあえて志しました。特別養護老人ホームや福祉作業所などで働く介護福祉士を目指しています。
県介護福祉士会によると、初任給は13万~14万円程度。人材不足が勤務を過酷にし、介護労働安定センター高知支部によると、介護労働者の離職率も14・6%と高いのが現状です。このため、厚生労働省は今年度から雇用不安の解消も狙い、介護福祉士の資格取得を支援する「離職者等再就職訓練事業」を始めました。教材など実費以外の2年間の授業料約200万円が全額補助されます。県内の助成枠は30人で、同校は半数の15人(20代~56歳)を受け入れました。中山さんと木村さんもそうです。
同校の昨年の入学者は、過去最低の23人(社会人経験4人)でしたが、今年は56人(同・助成の15人を含む22人)と急増。もう一つ追い風があります。12年度からは国家試験に合格する必要がありますが、それまでは専門学校を修了すれば資格が得られるのです。
3人とも「勉強が楽しい」と口をそろえます。「税金を使って勉強をさせてもらえる。ありがたいよねぇ」と中山さん。背水の陣で学ぶだけに「私たち大人組は真剣ですね」。小島正敬(こじままさひろ)校長は熱心さに目を細める一方で、心配もしています。「介護現場の実際を知りません。10月から施設での実習が始まります。おむつ交換やお年寄りとのコミュニケーションなどを体験してみて、考えていたものと違うとならないか」
横山さんは助成制度を知らず、学費は親に頼りました。母が介護職のため仕事の厳しさは知っているつもりです。大卒の同級生らが不況で次々解雇されており、決意を揺るぎないものにしています。
「高齢者や障がい者が地域で安心して暮らせる施設を造りたい」。明確な目標を持つ木村さんは、一語一語に力を込めます。「始めるのが遅かったのでは」と講師の元小学校長に不安を打ち明けたところ、こんな色紙を贈られました。作家の有島武郎がわが子にあてた言葉が書かれています。「前途は遠い。そして暗い。然(しか)し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける」(「小さき者へ」より)
同校は小高い山の中腹にあり、長い坂を登って通学します。介護職場を志す彼らの前にも登るべく長い坂がありますが、他県より高齢化が10年早く進む高知では、多くのお年寄りが彼らを待っています。
著者名/毎日jp 毎日新聞社 支局長からの手紙:長い坂を登って /高知
http://mainichi.jp/area/kochi/letter/news/20090720ddlk39070214000c.html
最終アクセス2009年7月21日
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