発信箱:仕事か介護か=磯崎由美(生活報道部)
介護休業制度が創設されて10年になるが、取得率が上がらない。全常用労働者の0・04%(04年度)というから、2500人に1人の割合だ。先の国会での改正も、小さなものにとどまった。
「まるでフルタイムで働いた後、そのまま夜勤をするような毎日です」。高校教諭のS子さん(46)はため息をつく。半身まひで認知症の母と2人暮らし。午前5時半に起き朝食を済ませ、デイサービスへ行く母の身支度をして出勤する。帰宅後は家事に追われ、介護ベッドの脇で横になる。真夜中も用便や足の痛みを訴えるたびに介助し、2時間と続けて眠る夜はない。
母が倒れて4年たつが、彼女は介護休業制度を利用したことがないという。まとめてしか取れないので、長期間の介護には適さない。しかも職場は育児休業と違い、無給扱いにしている。介護保険サービスの自己負担額は月10万円近いというのに。
そもそも今の制度は在宅介護をしながら働くためのものではなく、親が倒れた後で施設を探し、その後の方針を立てる準備期間といった趣旨のものだ。介護は育児と違い終わりが見えず、休み続けるわけにもいかない。でも先が見えないゆえに、介護や看護を理由に離職する人は年間15万人近くに上っている。働き盛りの人たちがリタイアせざるを得ない現状は、職場にとっても大きな損失のはずだ。
「つらいけれど仕事を辞めなくて良かった」とS子さんは振り返る。介護に行き詰まっても、教室で自分を待つ子らがいる。母を通して生きることを深く考え、生徒との向き合い方も変わった。
仕事か、介護か。二者択一を迫られるものであってはならない。
著者名/毎日jp 毎日新聞社 発信箱:仕事か介護か=磯崎由美(生活報道部)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090722k0000m070123000c.html
最終アクセス2009年7月22日
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