ホーム > 業界新着情報 > 最新情報 > 猛暑の死者と高齢者福祉
日本の福祉体系は何かと非難の矢面に立つ事が多いです。
しかし、この記事を書いた筆者は日本からでは見えてこない、日本の社会保障のいい面もあると訴えています。
少し違った視点からとらえた、記事を読み、日本のいい面を残しながら、社会保障が改善されればと思わずにはいられません。
日常、みんなが享受している社会的サービスは、タダではできない、つまり財源が必要なことが広く理解され始めたようです。今度の参院選で各党間の争点の1つになっているのも、その表れでしょう。
日本と欧州各国を比較し、社会サービスの国民負担率がどう違うか、東京・恵比寿の日仏会館でシンポジウムが開かれました。収入から税や社会保障負担をどれほど支払い、公共サービスを支えているか、国民所得比で比較して背景を議論したわけです。
財務省統計(07年)によれば、日本では個人所得、消費、法人所得、資産の租税負担率が24・5%、社会保障が15・0%で計39・5%に対し、高負担、高福祉といわれる欧州ではフランス37・0%と24・2%の計61・2%、ドイツ30・4%と21・9%の計52・3%、スウェーデンとなると、47・7%と17・1%の計64・8%という内訳です。もちろん、物価を含めた総合的な暮らしやすさは、単純な数字比較だけでは判断できないのは事実です。
日欧比較から明らかになったもう1つの点は、日本では社会保障が医療を中心に極端なほど高齢者に手厚く、西欧や北欧は若者の失業、就労対策や家族手当など社会の現役世代に手厚い支援を施している点でした。パネリストからは「日本は今後、家族や若者支援にもっと力点を移さなければならない」という意見が出ていました。もっともな指摘です。
しかし、国の歩みや国民性を勘案すれば、欠点ばかりとも言い切れない面があります。
03年8月、欧州が記録的な猛暑となり、フランスで例年の同じ月より2万人多い高齢者の死者を出す異常事態に直面しました。当時、私もパリ特派員としてあの猛烈な暑さを体験しました。石造りの建物が多いのに冷房設備が少ないパリなので、夜中に水風呂に入らないと、寝られないほどの暑さ。
それにしても、高齢者の死者の多さは異様で、オルリー空港の格納庫が臨時の遺体安置所に。パリでは1人暮らしの高齢者が多い。若い世代はだいたいバカンスで長期にどこかへ出かけている。遺体の確認ができず、引き取り手のない遺体がたくさん出たからです。
日本でいうデイ・サービスはどうなっていたのか、行政はなぜ手を打てなかったのか。巨大な格納庫に収容された白い遺体収容バッグの列を思い出すと、あれが現実の出来事だったとはいまでも信じ難いのです。
東京にも猛暑はきます。しかし、1か月で例年より2万人多い死者が出たとしたら、阪神大震災以上の自然災害が起きたのに等しい。それが起きていない背景に、限りある社会保障予算をより高齢者に注ぎ、また高齢者を気遣い、敬う伝統がかろうじて機能してきたからだとしたら、日本の予算の使い方にも一定の効用を認めて良いのではないか。日欧比較の議論を聞きながら考えさせられたのです。