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裁判革命:市民、法廷へ/2 仕事、病気 悩む候補者
「裁判員になることがむずかしい事情」の項目に目を通し、「介護等」の欄にマークを付けた。昨年11月末に最高裁から届いた裁判員候補者通知。アルバイト男性(43)=京都府在住=は、同封された「調査票」に回答して、返送した。
70歳代の両親と3人暮らし。親は介護まで必要ではないが、洗濯物を運んだり、力のいる仕事は自分の役目だ。家計を支えるのは、アルバイト収入と両親の年金。日が昇らないうちに家を出て、30分近く自転車をこぎ、会社に向かう。
非正規雇用の立場。自分の代わりは、いくらでもいるのかもしれない。裁判員になって仕事を休めば、理由をつけて辞めさせられないだろうか。「不安です」と漏らした。
<裁判員法は、労働者が裁判員や候補者になって休暇を取ったことを理由に、解雇や不利益な扱いをしてはならないと規定。各地裁は、有給休暇制度の導入など環境整備を経営者に要請するが、中小企業には不安感も根強い。>
アルバイト男性は、刑事裁判に関心がある。約10年前に友人が詐欺罪に問われ、傍聴に行ったのがきっかけだった。友人の公判の直前の別の事件で、被告の母親が法廷で涙する姿を目にした。「子どもの時は、良い子だったのに」。社会の一面を見た気がした。それ以来、時間があれば、裁判所に足を運ぶ。
有罪率が99%を超える日本の刑事司法。被告が否認する裁判で、検察側のストーリー通りに判決が出て、違和感を覚えたケースも何件かあった。「市民の目」が入ることで、何かが変わりそうな気もする。「勝手な話ですが、制度には賛成です」
「仮に仕事が忙しい時期でも、職場を3日間空けられないことは、ないですね」。大手メーカーに勤務する男性会社員(29)=兵庫県在住=は、一安心した。候補者通知の封筒の中に、制度のQ&Aを載せたイラスト入り小冊子が入っていた。目を通すと、太字で「多くの裁判は3日以内」とあった。
<審理の迅速化を図るため、裁判官、検察官、弁護人が争点を整理する公判前整理手続きが行われる。最高裁は、裁判員裁判の約7割が3日以内、約9割が5日以内に終了すると見込む。>
不況の中、職場は「早く家に帰れ」というムードだ。裁判員として呼び出しを受けた場合の休暇の規定など、詳しいことは聞いていないが、大手企業としての体面もあるだろう。「その辺は、まじめにやる会社だと思いますんで」と笑った。
「できれば参加してみたい」。候補者となったNPO法人の女性スタッフ(46)=福岡県在住=は、腎臓病の治療のため夜に週3回、1回5時間の人工透析を近所の病院で受ける。制度の対象は、殺人罪など重大事件。「命の大切さは、健康な人よりも分かるかな」。そんな思いもある。
地元の裁判所に問い合わせると、午後5時ごろに裁判は終わるというから、問題はなさそうだ。ただ、夜間透析を実施している病院が近くにない地方で暮らす人だと、参加は難しいかもしれない。
さまざまな環境の中、裁判員候補者たちは参加と不参加の間を迷い、悩んでいる。
著者名/毎日jp 毎日新聞社 裁判革命:市民、法廷へ/2 仕事、病気 悩む候補者
http://mainichi.jp/select/jiken/saibanin/kakumei/news/20090521ddm041040083000c.html
最終アクセス2009年5月21日