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特集:日本・スウェーデン認知症フォーラム 認知症ケアの未来像
09/04/29 【研修

特集:日本・スウェーデン認知症フォーラム 認知症ケアの未来像

 

◇~認知症の診断・治療・介護のあり方~

スウェーデンの認知症対策に学ぶフォーラム「認知症ケアの未来像~認知症の診断・治療・介護のあり方」が3月25日、東京都千代田区の全電通ホールで開かれた。西島英利参院議員が「日本の認知症対策~特に医療と介護の取り組み」と題して基調講演した後、スウェーデンと日本の専門家が認知症の診断や治療の現状と課題について話し合った。会場には約300人が集まり、熱心に耳を傾けていた。(パネルディスカッションの司会は斗ケ沢秀俊・毎日新聞東京本社科学環境部長)

あいさつ

◇人生の晩年に尊厳を--スウェーデン高齢者福祉・国民健康担当大臣、マリア・ラーション氏

高齢者の大半は活動的で独立した暮らしをしていますが、年齢を重ねるにつれて、アルツハイマー病などの病気のリスクは高まります。スウェーデンでは高齢者の93%が住宅で暮らしつつ、時折、広範囲にわたる介護を受けています。施設で介護を受けることは、それ以外の選択肢がなくならない限り、ありません。施設に入居している高齢者のうち70%以上は何らかの認知症を患っています。

 BMI(体格指数)30以上、高血圧、高コレステロールが認知症発病のリスクを高めることが研究で明らかになっています。私たちが生活習慣を変えることでリスクを減らせるのです。あらゆる活動は脳に良い影響を与えます。身体的、知的、社会的活動をすることで、発病を抑制することができます。

 病気を抱えた本人と家族の双方にとって、介護の質が高いほど、生活の質も高くなります。社会が負担するコストの抑制にもつながります。自分自身の要求を伝えられない人々に安心感を与え、尊厳や人権を尊重することは医療上の課題であるだけでなく、倫理的義務でもあります。私たちの目標は一人ひとりの人生の晩年を、尊厳が守られ、個人の意思が尊重される時期にすることです。

 国際的なレベルで意見を交換し、経験や優れた取り組みを共有することは重要です。協力関係をさらに充実させるために、このフォーラムは大きな意義があると思います。

基調講演

◇患者急増への対応課題に--参院議員・精神科医、西島英利氏

認知症はかつて老人性痴呆と呼ばれていました。しかし、この言葉では差別や偏見がなくならないという議論があり、04年に老年医学会が認知症という名称に変えようと決め、それからこの言葉が使われるようになりました。認知症という言葉の歴史は浅いのです。 認知症の治療も確立していませんでした。大声を出す、徘徊(はいかい)するといった問題行動と呼ばれる行為をする方は精神科病院で治療、というよりは収容されているという時代が長く続きました。特別養護老人ホームは寝たきりの方の施設として作られましたが、認知症の方も入るようになりました。ここでもケアの仕方が確立していませんでした。

 精神科がきちんと病気として治療しなければならないということで、私の病院は92年に認知症専門病棟を設立しました。88年から認知症疾患センターが全国約120カ所に作られました。06年までありましたが、ほとんど機能していなかった。偏見がありましたし、治療法もきちんとしていなかったためです。センターがなくなるという話を聞いて、私は国会で質問し、結局、認知症疾患医療センターが新たに設けられることになりました。

 認知症で入院、通院している患者数は94年に約11万人でしたが、05年には約32万人になりました。入院理由の8割は問題行動とそれによる家族の疲労です。問題行動を伴う場合は治療が必要です。向精神薬に対する偏見がありますが、向精神薬をうまく使えば、患者さんが落ち着きます。特別養護老人ホームや在宅でも対応できるようになります。

 厚生労働省の研究班による推計値では、65歳以上で認知症の方の数は05年に204万人だったのが、15年には302万人、25年には386万人と急増します。どう対応するかは国の重要な課題です。08年度から始まった認知症疾患医療センターは全国150カ所に設置され、相談、治療にあたります。地域の医療機関や介護施設との連携もする中核機関になります。医療から介護への切れ目のないサービスを提供できるよう、関係機関が連携して、地域で安心して暮らせる体制を築きたいと考えています。

 

◆地域、家庭で支えよう 早期発見、治療のカギ

◇シルビアホーム財団CEO、ヴィルヘルミーナ・ホフマン氏

◇ウメオ大教授、グスタフ・ブフト氏

◇スウェーデン補助器具研究所作業療法士、インゲラ・モーンソン氏

◇厚生労働省老健局老人保健課長・鈴木康裕氏

◇熊本大大学院医学薬学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)教授・池田学氏

ホフマン氏 シルビアホーム財団はシルビア王妃の発案で96年に設立され、認知症の患者・家族を支援しています。王妃自身がお母さんの認知症で苦しんだ経験をお持ちです。シルビアホームは、デイケアと教育をしています。認知症の種類に応じて、どのような介護の手法が必要かを教育しています。医師や看護師など延べ9000人が受けました。家族のための教育プログラムもあります。1日だけですが、家族同士のネットワークができます。

 ブフト氏 認知症研究者は資金不足に悩んできました。認知症患者はエイズ患者の10倍もいるのに、研究費は20分の1にすぎません。研究は断片的で結果が医療者にきちんと伝わっていない問題もあります。これを改善するには、人々の姿勢を変えることが必要です。

 モーンソン氏 国家プロジェクト「技術と認知症」が昨年まで3年間実施されました。認知症患者と家族にさまざまな福祉機器を使ってもらい、その状況を記録しました。記憶力支援のための電子カレンダー、1日にすべきことを音声や振動で伝えるハンドコンピューターなどです。外に出ようとすると介護者に連絡が入るセーフティーアラームを使うと、徘徊(はいかい)の心配がいらなくなります。福祉機器の使用は早期に始め、継続することが重要だということが分かりました。

 池田氏 認知症かどうかは本人や家族にとって極めて重要な問題です。認知症外来に来る方の20%は認知症ではなく、正常老化による物忘れやうつ病、せん妄と呼ばれる意識障害です。物忘れと認知症の違いは、自覚があるかどうか。認知症では、これが薄れます。自覚のあるなしを丁寧に見分けることが必要です。

 認知症にはいくつもの種類があり、それぞれ治療方法が違います。アルツハイマー病のように、現在の医療では完全に治療できないものもありますが、脳血管障害の後遺症である脳血管性認知症は脳梗塞(こうそく)が予防できると防ぐことができます。

 アルツハイマー病の症状で最も多いのは、「物とられ妄想」です。「うちの嫁が財布をとった」など、身近に介護している人に向きます。初期に出るので、その時点で介入することが重要です。介護をしている人にあらかじめそれを説明したり、デイケアを最大限活用して接触時間を減らすといったことで、介護者の負担を減らします。それでも対応できない場合、慎重に向精神薬を使います。

 鈴木氏 軽度以上の認知症の方は約150万人いますが、半数近い73万人は自宅にいます。高齢者の3人に2人は夫婦だけで、あるいは独りで暮らしており、今後は独りで暮らす高齢者が増える見込みです。高齢者用アパートや有料老人ホームなどを増やし、独りで生活できない認知症の方にサービスを提供する形にしたいと考えています。

 家庭や地域の方に認知症について理解してほしいということで、05年から10年計画を進めています。認知症サポーターを100万人つくるという目標で、今は72万人います。オレンジ色のリストバンドをしています。

 斗ケ沢 福祉機器の使用者の感想は。

 モーンソン氏 家族からは「もっと早く使いたかった」という声が多いです。

 池田氏 日本では、自治体によっては初期の認知症の方に、電磁調理器の購入補助をしているところもあります。介入のタイミングが重要で、一歩遅れると、慣れたガスコンロから電磁調理器に替えられません。

 斗ケ沢 認知症の早期発見の意義は。

 ブフト氏 早く発見できれば、早く治療に取り組むことができます。地域の医師や看護師が早い段階で患者に会い、診断することが重要です。それができるようになるには研修が必要です。

 池田氏 家族が正しい知識を持ち、おやっと思った時にかかりつけ医に相談していただくことが大事です。

 斗ケ沢 認知症サポーターはどんなことをするのですか。

 鈴木氏 認知症とはこういう病気で、何か変だと思ったらどうすればよいかという知識の普及役です。身近にサポーターがいたら、ぜひ話を聞いてほしいと思います。

 ホフマン氏 サポーター制度は素晴らしいですね。アイデアとして持ち帰ることができると思います。スウェーデンでは高齢者介護をする人の多くが引退の時期を迎えていて、若い人に入ってきてもらわなければ困る状況になっています。若い人たちに、介護が魅力ある分野だと知らせる活動に取り組んでいます。

 斗ケ沢 在宅と施設のどちらを重視するのでしょうか。

 鈴木氏 国が決めるのではなく、個人や家族の思いが大事だと思います。在宅と施設を行ったり来たりするという選択があってもよい。地域に介護施設がある程度存在して、患者・家族が選べるという状況をどう作るかが行政の役目です。

 

主催   毎日新聞社

特別後援 スウェーデン大使館

後援 厚生労働省、日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神科看護技術協会、日本精神保健福祉士協会、ぼけ予防協会

 

著者名/毎日jp  毎日新聞社   特集:日本・スウェーデン認知症フォーラム 認知症ケアの未来像

http://mainichi.jp/select/science/news/20090429ddm010100172000c.html

最終アクセス2009年4月29日   

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